近年、made in JAPAN的な観点から欧米中心主義であった建築を解体・再構成しようとする建築家が注目されるようになってきた。その中で、建築物がもつ構築性からの脱却に可能性を見出そうとする一群がある。そこでは構造的なアプローチと平行して、空間の構成方法においてもあらたな文法が模索されている。これからは「これぞ建築!」から「これも建築?」を含んだ横断的で多角的な視点から建築が語られていく運命にあるようだ。
しかし、建築が空間的な問題と関係をもつ以上欠かすことの出来ない文法がある。それはコンポジションである。コンポジションとは、建築の各部分の三次元的な組み合わせを意味し、プロポーションとスケールを構成要素にもつ。プロポーションとは全体と部分、部分と部分との大きさの割合を意味する。整数比、シンメトリー、黄金比といった古典的な建築の構成要素として馴染みが深い。また、比例というとついつい長さの問題と考えがちだか、そのように限定する理由はどこにもない。一方、スケールとは人間的な尺度の建築への適用を意味する。プロポーションが同一の関係でもスケールが異なれば、結果としてその空間が与える影響は大きく異なる。言い換えると、たとえ造形性がすばらしくともスケール感の欠いた設計では、空間を構成したとは言い難いのである。
スケールについて考える際に、一度必ず通過してほしい儀礼がある。それは、「1m」とは何か?である。我々が当たり前の様に用いるメートル法は、絶対的な寸法ではなく、すべてのインデックスがそうであるように便宜上定められた尺度に過ぎない。その歴史は浅く、その定義も時代と共にその都度更新されてきた。つまり、我々はスケール感を獲得するためには、コンベックスを片手にそこ・ここを実測する必要がある。なぜなら、メートル法が相対的な尺度でしかない以上、実測は自らの体験を寸法として把握するだけでなく、安易に与えられた既存の寸法体系から自らを解放することに繋がるからである。
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モデュール