図面には、「思考を定着させる」役割と「意図を伝達する」役割の2つの顔があるように思う。この項でふれるのは、各自が持っているイメージをかきとめ、それを具体的にねりあげる過程でつくられる図面 = 「思考を定着させる図面」についてである。
図面をかく時にはイメージした空間がまずあって、それを頭の中で水平と垂直に分解し図面としてかきとめていると思う。そのかきとめる行為を繰り返す中で、イメージどおりかどうかを確認し、予想外のところを発見したり、かきくわえたり、訂正して、イメージを紙の上に蓄積していく。もちろん、同時にスケッチパースや模型、3Dモデリングなどでも徹底的に確認をする。これは、よっぽどのことが無い限り、建築を実際につくってみて考えようということが許されないから、力がはいるのも当然のことである。こうして、最初のイメージに寸法を与えてしっかりと紙の上に定着させる過程でできてくる図面がある。
さて、図面の描き方には一定のきまりがある。用紙の大きさ、線や文字の種類や太さ、縮尺や寸法、記号、図面の種類、描く手順などなど、JIS(日本工業規格)などによって定められている。が、実際には、その表現は人によってさまざまだといえる。それは、図面が設計の意図を伝える役割をもっているからである。
少し乱暴ないいかたになるが、初期の課題で提出される図面は、「思考を定着させる」ことが主で、「意図を伝達する」ことに少し配慮した図面といっても差し支えないだろう。
図面の描き方には一定のきまりがある。が、それに振り回される必要はないと思う。
描き方がわからなければ調べればいいし、うまい表現を参考にすればいい。それでもわからなければ、スケッチやパース、模型で表現すればいい。誰もそれをしてはいけないと言っていないのだから。なんとかして伝えたい!この気持ちこそが重要じゃないだろうか。そして、その気持ちは、手描きやCADの別とは関係なく、やはり図面から伝わってくるものだと思う。