「建築史を知ろう」と言われても、リアリティを感じない。
自分の生活とまったく切り離された存在として建築史を見ている。
こういった人は多いと思います。実は私も、あるきっかけを与えられるまではそう感じていました。しかし今ではむしろ、歴史とは今の自分と密接にかかわるものだと考えています。特に新しいものを創造するとき、建築史は重要な道標となってくれます。
自分の生まれた年の海外雑誌をめくると、日本の建築としてこの「幻庵」が紹介されていたのが印象に残っています。
撮影:ウズラボ
どうすれば歴史と自分を繋ぐことができるのでしょうか?ここで、その方法を紹介したいと思います。まず、図書館に行って、自分の生まれた年の建築雑誌を手にとってみてください。
そこでは、どんな建築家がどんな建築をつくっていましたか?
そこには、どんな話題が取り上げられていましたか?
次に、自分の人生が大きく変化したとき、記憶に残っているときなどを思い出してください。そして、その年の建築雑誌をペラペラとめくってみましょう。
このような作業を行うと、自分の知っている建築、自分の知っている話題などが見つかってくるはずです。何も見つからなくても、その時代に何が起こったのか、ということを知ることができるはずです。こうした体験を通して、建築史の一部が自分と関連づけられていくことが実感できると思います。
建築史とは、有名な誰かのための、勝ち組の歴史というわけではないのです。もちろん、そういった要素もありますが、自分と身近な部分も存在するのです。建築史をちょっとのぞくつもりで、図書館の雑誌書庫で時の旅をしてみてください。