デザイン基礎における「キーワード」として選定された言葉は、単に辞書的な意味としての役割を担うものではなく2つの用途があります。それは、第一に改めて「建築」や「空間」を考える際に、具体的な手がかりとして有効なものであるということがあげられます。第二には、シラバスに「言葉の先に広がる領域を読者自身の力でひろげていくものなのです」(シラバスに掲載されているデザイン基礎の「課題の取り組み方」を参照)とあるように、新たな行為や試みをイメージする媒体でもあるということです。言い換えると、言葉そのものは非常にシンプルなものです。しかし、普段から当たり前のように思っているものでも、もう一度新たな視点で物事を捉えることによって、そこから何か新しい「空間」を見いだす、発見することへとつながっていく可能性を秘めた言葉が選ばれているのです。例えば、「あける」という「キーワード」を例にとりあげてみましょう。「あける」という行為や、それによってもたらす影響について、普段わざわざ考えてみないことを既存の価値観にとらわれず、あえて捉えなおしてみる。その上で、「あける」といった言葉の意味を豊かにするような新たな提案を考えてみようとするところにこの課題の意図があります。もう一度日常の空間を意識的に見渡す、あるいは身の回りをフィールドワークすることにより、「あける」によって生じる新たな役割や意義を発見したときの驚きや感動が設計活動の原動力になることを願います。
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フィールドワーク