建築学習 memo


  1. 環境デザイン演習[建築]デジタル教科書
  2. 建築の設計過程 TOP
  3. 01 条件
    1. 01-1 要因の把握
    2. 01-2 要因の捉え方
    3. 01-3 設計条件の定義
  4. 02 構想
    1. 02-1 コンセプト創出
    2. 02-2 建築計画の検討
    3. 02-3 提案の組立
  5. 03 具現
    1. 03-1 構想の形態化
    2. 03-2 構成の検討
    3. 03-3 図面描写
  6. 04 表現
    1. 04-1 表現する目的
    2. 04-2 素材と表現方法
    3. 04-3 表現の構成

04 表現 −設計意図のプレゼンテーションと伝達−


プレゼンテーションの目的はあくまで伝えることです。伝わらなくては意味がありません。伝わるとは相手に受け入れられることです。つまり設計のコンセプトや提案を理解されるように示す、もっと言うと説得力を持って納得させることです。その設計の魅力を示し、共感させなければなりません。
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条件の項目でも述べたように、設計は計画であり、建築の計画は設計者1人が納得すれば良いものでは決してありません。人を説得するにはその人が良いと思っている熱意のようなものが不可欠ですが、それだけでは不充分です。提案を納得させるためには、その熱意を支える理論が必要です。その理論はプレゼンテーションの段階で突然湧いてくるものではありません。もちろん条件設定の段階から常に意識して設計の中に留めておかなくてはならないでしょう。感情だけで語ることは独り言に過ぎず、それは批判も批評もできない、設計者だけのものです。建築の計画は設計者だけのものでは絶対にあり得ません。このように、プレゼンテーションには、人を納得させるための理論的に整合性を持った展開が求められることが多いでしょう。
しかし理論だけでは設計内容の魅力を充分に伝えるにはやはり不充分です。その魅力を伝えるためには設計者の熱意も必要です。理論だけで熱意が伝わるかというとそうではないのです。熱意を伝えるためにはプレゼンテーションのストーリーや迫力、そして美しさも必要です。場合によっては、理論など吹っ飛ぶような熱意を持ってプレゼンテーションすることも必要かも知れません。狂気に近い熱意を持って模型を作り込むこと、パースを作り込むこと、図面に書き込むこと。もちろんその熱意をどう伝えるのかという客観的な視点と技術は必要になるかも知れませんが、設計者がその設計に掛けた想いをどうにかして伝えるという熱意は必要でしょう。他人の設計に対して、勝手に良いものだと思いこんでくれる受け手は稀です。
プレゼンテーションは自分の設計したものに対する責任です。「分かってくれない」ではプレゼンテーションは成り立ちません。「分からせなければならない」のです。設計者自身が設計の内容を伝えることを放棄するのは、自分が設計したものを見捨てることと同義です。親切に受け取ってもらうのではなく、設計者が親切に伝えなければなりません。過剰なぐらいの感情を一方的に注ぎ込んでも納得させることができるかどうか分からないものです。そのぐらいの熱意を持って、表現することに取り組んで行かなくてはなりません。
プレゼンテーションは一つのデザインの分野になるほど、難解であることに違いありません。しかしカタチを作ってそれをそのまま置き去りにすることも無責任です。自分の設計したものに対する責任は自分で取らなくてはなりません。誰も代わりプレゼンテーションをしてくれることはないのです。もちろん勝手に理解してくれることもありません。

またプレゼンテーションを行うことはもちろん自分の設計した建築の表現ですが、その作業の中で自分の設計したものを冷静に見つめ直しながら魅力的な点や空間を探し出し、それを十二分に表現し印象づけるという作業も欠かせません。それはある種の自己批評と言える作業でしょう。そうすることで設計の良かった点、悪かった点などを自分自身で判断し、評価を下し、次回の設計のモチベーションとすることができると思います。プレゼンテーションの作業の裏にはこの様な自己批評の作業も隠れていることを意識しながらプレゼンテーションを行うと、プレゼンテーション力の向上もさることながら、建築に対するモチベーションと建築の分析能力の向上にも繋がるものと思います。
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04-1 構想[理論] −表現する目的−