建築の提案は、極端に言うと「どの様な空間と空間の関係性をどの様に設けるのか」と言うことができます。空間と空間の関係性とは、例えば内部空間と外部空間、または敷地や周辺環境との関係性に代表されるような関係性です。具体的には堅いコンクリートの壁で隔てられた関係、近くに感じながらも近づけない関係、吹抜を通して上部にその存在を感じ続ける関係など、様々な関係があります。他にも天井や床の形など空間形態で操作される関係、床から天井までの壁と腰壁・垂れ壁・小さな段差や階段、開口部の形などの形態で操作される関係、空間の大小などのスケールの差異から作り出される関係、位置や距離で操作される関係、またフロートガラス・フロストガラス・プリントガラス・ルーバー・暖簾などといった素材で操作される関係などが考えられます。どのような関係にしろ、実際に人がその空間に立つ事を考えながらスケールを当てはめて、窓などの開口部の位置と素材、扉の位置、照明の配置なども含めてコンセプトをどの様に具体的に実現させるのかを考えましょう。また描いた図面が実際にどの様に立ち現れるのか具体的な寸法を考えながら、立体的な形態に移し替えていきましょう。そして、創造した形態がコンセプトをどのように具現化しているか、上手く具現化できているのか、もしできていないのなら何が原因で問題となっているのかをさらに追求しながら形を具現化させましょう。
この具体化させる作業を進める際に、「窓があれば良い」という意識での設計と「どのような窓のカタチが最も適しているか」という意識を持っての設計では、出来上がるものに雲泥の差が顕れます。目的を達成するだけの設計は、実はそれほど難しいことではありません。しかし建築を目指すのであれば、やはり「どのようなカタチで目的を達成するのか」が問題となるでしょう。条件を考慮して「最も良いカタチ」を計画するのが設計ですので、最も良いと考えられるまでカタチを追い求める意識があるかどうかは非常に重大な点です。「〜で良い」ではなく「〜が良い」と断言できるまで、各部分のあるべきカタチをしっかりと考察しましょう。「〜で良い」と思う程度であればスタディと思慮が足りないと言わざるを得ません。「〜が良い」と言えるまでスタディと考察を繰り返すと、そう考えられる理由も同時に伴っているでしょう。そうすればさらなるコンセプトの充実が図れ、論に整合性と説得力を備えることになります。もちろん、設計内容もより魅力的になることに間違いありません。
設計を魅力的にすることは才能の問題ではなく、実は意識の問題です。常に高い意識を持つことがより良い設計を行うためには非常に大切となります。そのためにも、多くの建築や作品集などを見て、高い意識を保ち続けることが重要となるのです。
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03- 構想[手法] −構成の検討−