「小津安二郎DVD-BOX第一集」を買いました。
この第一週には「東京物語」「彼岸花」「お早よう」「秋日和」「秋刀魚の味」の計5作品が収録されています。
今までに何度か見たこともある、「東京物語」や「秋刀魚の味」といった、いわゆる「名作」だけでなく、実は、私自身は「お早よう」が欲しくてこのDVD-BOXを買ったようなものです。
この「お早よう」、大変コミカルながら、非常に興味深い作品です。
物語は、例のごとく非常にシンプルで、小学生の兄弟が「ウチにもテレビ買って」とうるさくねだり、お父さんに怒られたことをきっかけに「無言ストライキ」に突入する。ま、そんな話しです。
舞台は当時(昭和34年)の新興住宅地の様な場所で、ほぼ同じ外観の住宅が建ち並んでいるのですが、
玄関にカギが掛っていなかったり、日常の出入りは開けっ放しの勝手口だったり、しかもその勝手口はお隣と向合っていて、お互いによく見通せてしまう点など、現代の住まいとは大きく異なる点でしょう。
そこでは、「醤油の貸借り(映画ではビールですが)」の様な昔ながらの、いわゆる「濃密なコミュニティ」が形成されています。その「コミュニティ」と「無言ストライキ」とが影響しあって様々な小さな事件が展開していくのですが、小津はその様子を、例によって淡々と描写していきます。
もともとそんなに大きな事件が起きているわけでもありませんから、「クライマックス」などもなく、エンディングもスッと終っていく、そんな映画なのですが、「家族」のあり方だけでなく「近隣/ご近所/コミュニティ」の様子が丹念に描写されている点が注目できます。
「コミュニティ」といえば、よく建築デザインコースの設計課題にも登場するキーワードです。
「現代都市居住においては地域との接点が希薄である、よって、昔ながらのコミュニティを復活させ・・・」とは、読み耳にするフレーズですが、この映画を見る限り、「コミュニティ」ってものなかなかやっかいな側面もありそうです。でも、映画を見ながら丹念にその長所短所を整理できれば、きっとコンセプトづくりに役立つことでしょう。
「お早よう」に限らず、小津の映画には日常の何げない風景が織込まれています。物語の本筋とは別のところにも、建築を考えるヒントが数多く散らばっているような気がします。
そんな、「建築のヒント探し」をしながら、一度見た映画をもう一度見る。
課題制作の息抜きに、試してみてはいかがでしょうか。