ある日のこと。
わざわざ東京まで打合わせに出かけると、先方がすっかり勘違いしてしまっていて、なんと福岡へ出かけてしまった後。
怒りをとおり越えて、不思議におおらかな気持になってスタッフと談笑。
「ま、私自身もよくポカしますから」とにっこり笑って事務所をでたのだが、さてさて、このまま京都まで帰るには少しもったいない。どうしよう。
4時前だったからどこかへわざわざ行くのも、少し時間が足りない。美術館もまにあわない。
そもそもこの「少しだけ解放された気分」にぴったりな場所はどこか無いものか・・・
そうだ、あそこだ。 ・・・横浜港大桟橋ターミナル。
この不思議な建築に特別期待を寄せていたわけではないのだが、でもやはり一度でも自分の足で踏みしめてみないことには評価のしようがない。そんな事情と「少しだけ解放された気分」とが何となくマッチし、この「大桟橋」が一体どこにあるのかもよく確かめずにそのまま電車に飛び乗った。
撮影:著者
床なのか壁なのかスロープなのか、建築なのか公園なのかよくわかんない、うねうねとうねりながら連続するウッドデッキのそこここに申しわけ程度の手すりが取付いている。その手すりを手掛りにようやくどこまでが通路でどこから先へは入っていけないのかがわかる。でもよく見ると、入ってはいけないはずの領域にもたくさんの足跡が残されている。
「この足跡、みんな建築家だったり建築の学生だったりする連中のだろうな」などどと思ってニヤニヤしながら、ともかく手すりを乗越える。
もともと人が歩くことを想定して設計されていない領域だから、傾斜も少し急だったりして走るとバランスが取れない。
こけると転がり落ちてステンレスの手すりに激突、少し痛そうだ。などと思いながらオモムロにデングリまわり。
なぜか妙に興奮していて、みやげもの屋で買ったインスタントカメラ片手に床に寝そべったりしながら写真を撮る。
楽しかった。
何か不思議なものを体験することは、やっぱり気分がいい。
次は私が人をいい気分にさせないと・・・。