私達は、知らず知らずのうちに常識といった固定観念でモノを見ています。もちろん、普段の生活において、常識は不可欠なものです。しかし、建築を勉強されるにあたっては、普段自分自身がいかに常識という固定概念のもとにモノをみているのかをまず認識することが重要であるといえます。次には、固定概念をどこまで払拭して、自分の目でものを見るという方法をいかに獲得できるかということでしょう。それには、普段当たり前であると思い込んでいることや、自明とされる物事に対し、ほんとにそうなのかと問う姿勢、つまり批評精神を常に持つことが必要となります。
デザイン基礎の課題主旨というのは、「そこ・ここにある空間なるものの発見」です。この「発見」にあたって重要なのは、既存の価値観をそのまま鵜呑みにすることなく、もう一度自分なりの視点で、普段目にしているような空間や建築に接してみるという姿勢です。なぜならこの「発見」には、何も目新しいものではなく、普段当たり前に思っている事や物にこそ、もう一度疑ってみてみるべき要素が多く含まれているからです。
さらに次なるステップとしては、以上のような視点によりモノの見方を変えることで、自分自身が発見したものをどのように建築デザインに応用していくかということがあげられます。そのためには、自分が制作者だったらどうするだろう?逆に反例としてはどんなものがあるのか?どうすればよりよいものになるか、またこれとあれを応用したものがあっても面白いのでは?といった、「作り手としての思考の展開」へと進めてみるということです。