図面の描き方には一定のきまりがある。が、その表現方法は人によってさまざまだといえる。それは、図面が設計の意図を伝える役割をもつからである。大袈裟にいえば、図面にはその人の思想や観念が顕れるといえるだろう。
図面はいってみれば、建築の「言葉」である。
私達が対話をするときに単語や文法を身につけているように、最低限の図面記号や表記法はマスターするべきだが、どんな表情や声でどんな風に話すかは人それぞれであるように、表現方法は自由であり、そこにはその人自身の人格がにじみでてくるように思う。
当然のことながら、現場では描いた図面の通りに実物ができる。
小さな住宅でも家具詳細などまで含めると意匠図だけで50枚を超えることも珍しくないが、10枚の設計図と50枚の設計図を渡されたと想像してみれば、実際に建設する人にとっては、50枚分の設計者の執念がこもった図面を受け取った方が、多くの場合はより丁寧に建設に取り組んでいるのではないだろうか。
スクーリングでは、プレゼンテーションシートが傾いていてもお構いなしに発表したり、図面や模型を捨てて帰ってしまう光景を目にするが、自分がつくったものにもっと愛情を持って欲しい。
CADの普及で、何度でもプリントアウトできる。これは事実である。たかが図面ではあるが、そこには様々なものが凝縮されている。だからこそ、自分がつくったものは大切に扱って欲しいと思う。