一般的な不動産情報では「nLDK、〜m²」という表現が用いられる。空間情報を部屋の数や広さなどの数値情報として客観化・指標化したものである。これら数値情報では、空間の量(Quantity)は表現されても空間の質(Quality)を表現することができない。
建築空間を分割可能な単位空間(*1)に分けた場合、それぞれの単位空間は相互に「関係性(*2)」を持つことになる。「関係性」とは2以上の空間間の状態を示す言葉で、「開放性」、「連続性」、「遮蔽性」、etc・・・など多種多様である。「nLDK」は、一部屋を1つの単位空間とし合計(n+1)個の単位空間が存在するという空間の捉え方である(バス・トイレなどは除く)。各部屋は独立性が高く遮蔽的な「関係性」を持つものが多い。
最近、中古住宅のリフォーム市場が賑わっている。「nLDK」型の間仕切り壁を外し「ワンルーム化」するという手法である。狭い区切られた空間から、仕切りを取り外した広い空間に空間構造を変換する。単位空間自体はあまり変化しないが、単位空間同士の「関係性」が大きく変化しているのである。
原広司は「閉じた空間」に孔をあけることが建築だと言及している(*3)が、この孔の開け方が「関係性をデザイン」することに繋がる。また、孔を空けるだけではない。レベルを揃える・変化させる、素材を揃える・変化させる、見え隠れさせる、etc・・・と「関係性のデザイン」の手法は様々である。
忘れてはいけないのは、なぜ「関係性をデザイン」するのかということ、ここが重要である。
fig1. 単位空間同士の関係性
図版作成:著者
(*1):コンパクト建築設計資料集成〈住居〉,丸善株式会社,pp144〜157,1992
(*2):井上晋一他(積層集住空間研究会):「関係性の視点から見た積層集住空間の設計手法の検討」−「積層集住空間の計画手法に関する研究」,丸善株式会社, pp91〜126,1999
(*3):原広司著:「境界論」−「空間〈機能から様相へ〉」,岩波書店,pp133〜175,1987