建築学習 memo


  1. 環境デザイン演習[建築]デジタル教科書
  2. 池永 誠之
  3. 乾 陽亮
  4. 井上 晋一
    1. 多目的空間?
    2. 関係性をデザインする
  5. 植南 草一郎
  6. 小野 暁彦
  7. 小池 志保子
  8. 小杉 宰子
  9. 清水 愛子
  10. 竹内 正明
  11. 谷村 仰仕
  12. 富家 大器
  13. 野上 珠理
  14. 日高 奈々恵
  15. 山田 由希代

関係性をデザインする井上 晋一:環境デザイン基礎1,2(建築)添削担当/DDLプレゼンテーション担当


 一般的な不動産情報では「nLDK、〜m²」という表現が用いられる。空間情報を部屋の数や広さなどの数値情報として客観化・指標化したものである。これら数値情報では、空間の量(Quantity)は表現されても空間の質(Quality)を表現することができない。
 建築空間を分割可能な単位空間(*1)に分けた場合、それぞれの単位空間は相互に「関係性(*2)」を持つことになる。「関係性」とは2以上の空間間の状態を示す言葉で、「開放性」、「連続性」、「遮蔽性」、etc・・・など多種多様である。「nLDK」は、一部屋を1つの単位空間とし合計(n+1)個の単位空間が存在するという空間の捉え方である(バス・トイレなどは除く)。各部屋は独立性が高く遮蔽的な「関係性」を持つものが多い。
 最近、中古住宅のリフォーム市場が賑わっている。「nLDK」型の間仕切り壁を外し「ワンルーム化」するという手法である。狭い区切られた空間から、仕切りを取り外した広い空間に空間構造を変換する。単位空間自体はあまり変化しないが、単位空間同士の「関係性」が大きく変化しているのである。
 原広司は「閉じた空間」に孔をあけることが建築だと言及している(*3)が、この孔の開け方が「関係性をデザイン」することに繋がる。また、孔を空けるだけではない。レベルを揃える・変化させる、素材を揃える・変化させる、見え隠れさせる、etc・・・と「関係性のデザイン」の手法は様々である。 忘れてはいけないのは、なぜ「関係性をデザイン」するのかということ、ここが重要である。

inoue_02 fig1. 単位空間同士の関係性 図版作成:著者 (*1):コンパクト建築設計資料集成〈住居〉,丸善株式会社,pp144〜157,1992 (*2):井上晋一他(積層集住空間研究会):「関係性の視点から見た積層集住空間の設計手法の検討」−「積層集住空間の計画手法に関する研究」,丸善株式会社, pp91〜126,1999 (*3):原広司著:「境界論」−「空間〈機能から様相へ〉」,岩波書店,pp133〜175,1987