スタディを模型で行うとき、頭・目・手を連動させて、真に自分の考えと向き合うことが必要です。人に見せる必要はないものなので、誰にも遠慮はいらないのです。逆に説明的で上滑りなスタディをいくつ重ねても、得るものは少ないでしょう。コンセプトを考え、それがスタディ模型で視覚化されると、「ちょっと違う」「もっとこうした方がいいのでは」という考えが浮かんできます。それをおっくうがらずに、考えるスピードでどんどん模型に反映させていくのです。自分のイメージが保てる範囲であれば必ずしもノリも定規も必要ありません。そのうち、手が頭を超えて形を生み出してくれる一瞬に出会うかもしれません。そこで出来上がったものは決してでたらめなものではなく、理にかなっている場合も多いものです。しかしその場合も一旦引いて全体を眺めて判断する必要があります。スタディとは限りなく対象に接近し没頭する、そして引いて冷静に判断するということの繰り返しです。それが作る→壊すという設計活動のリズムへと繋がっていくのです。
関連用語:
スタディ
コンセプト
ここでは、例として5Mキューブのギャラリーの開口部をスタディします。 ギャラリーは展示スペース、受付スペース、ソファスペースを持つとします。ギャラリーは高台にあり眺めが良いので、ソファスペースは開口部に面して設ける計画です。
実際にスタディ模型をどの様に利用してコンセプトとカタチを発展させるのかの参考とし、大学の課題の中で実践して下さい。
また、スタディ模型はプレゼンをする模型ではありませんが、撮影する場合は、何をスタディしたのかをよく表現するために、アングルと光の当て方などを考え、注意深くシャッターを切りましょう。
受付の位置を、展示スペースやソファスペースのゾーニングや動線を考慮して仮決めする。
関連用語:
ゾーニング
動線
ソファのレイアウトを検討。向かい合わせでは会話はしやすいが、窓の外が見にくいか?などど検討。
ソファは窓の外の景色を見ることを優先させて、並行に並べるレイアウトにする。
開口部のスタディスタート。まずは全面壁面?
開放的にしたいが、全面窓にするより受付とソファスペースで開ける・閉じるのメリハリをつけた方が内部・ファサードとも変化がでるのでは?
ちょっとバランスがきつすぎるかもしれない。開けた部分のバランスを手探りで考えてみる。奥の展示スペースへの光の差し具合が極端すぎることも気になる。
必要な所だけ開けるのも、面白いだろうか?
とりあえず仮組して、実際に見ながら検討するため、ドラフティングテープで仮止め。
腰壁があると、ソファに座るとき落ち着くかもしれない。それにピクチャーウインドウのように目線の部分だけ開けるというのもいいかもしれない。
受付部分も切り取ったら、どうだろう?
眺める人・くつろぐ人・働く人が、窓から見えて、いいかもしれない。内で眺める人を外から眺める。視線が交錯していると言えるかもしれない。コンセプトの説明に役立つな、メモしておこう。スタディを通して、一つアイディアを発見できた。
それならいっそ、横長に切り取ってしまった方がすっきり見えるかもしれない。
どうだろう。しばし眺めて検討。
悪くないかもしれないが、やはり最初の開ける・閉じるのメリハリをベースに、もう一度考え直してみよう。
光をさえぎるのに同質の壁ではない方法はないだろうか。
ルーバーという手もあるか?
ちょっと、受付にも当ててみる。あまり効果はないか?
ルーバーの縦・横検討。横でいこう。
受付の窓は、もっと必要最小限にして、ソファスペースとの距離を保ちたい。
スタディ模型は考えるスピードで作るため、ざくざく切って、貼り付けていきましょう。
ここに壁を作るとどうだろうか?
まずはこれを一案としよう。
出典:『a+u』 2002年2月臨時増刊 「ヘルツォーグ・アンド・ド・ムロン」, 2002, 'エー・アンド・ユー'
Herzog & de Meuron「Prada, Tokyo」形態のスタディを数多く行い、最終的に上図に至っている。
出典:『a+u』 2002年2月臨時増刊 「ヘルツォーグ・アンド・ド・ムロン」, 2002, 'エー・アンド・ユー'