建物の外観や内部空間の様子を表すために、2次元で3次元の立体を表す図の描き方を「投影法」と呼びます。その中でもアクソノメトリック図法(アクソメ/等角投影法)やアイソメトリック図法(アイソメ/不等角投影法)は建築のプレゼンテーションの分野で非常に良く使われています。
平面図や断面図とは異なり、水平方向と垂直方向の両方の次元を一度に表すことができ、より直感的に外観や内部空間、空間構成を表現することができます。またCAD製図でもモデリングをする必要がなく、その製図の容易さから効率よく表現できる表現の一つでしょう。
また透視投影法(パース)とは異なり、縮尺が設定でき、寸法もきちんと拾えることも長所の一つです。
関連用語:
アクソノメトリック
「配置図の描き方」はミース・ファン・デル・ローエが1929年に設計し、現在再築されているバルセロナ・パビリオンを題材に、大まかな描き方の流れを説明します。
バルセロナ・パビリオンのアクソノメトリック
アクソノメトリックのVectorWorksデータ:bp_axnmtrc.zip
まず描く方向と角度を決めます。
角度は30度-60度・45度-45度・60度-30度のいずれかで描きます。平面図上での90°はそのまま90°として描くことができ、平面図をそのまま活用します。
平面図を変形させて、この角度を30度-30度にして描いたものがアイソメトリックです。
45度-45度の角度で描いたアクソノメトリックアクソメはやや縦方向が伸びて見える。
VectorWorksデータ:45-45.zip
30度-60度の角度で描いたアクソノメトリックアクソメはやや縦方向が伸びて見える。
VectorWorksデータ:30-60.zip
30度-30度の角度で描いたアイソメトリックアクソメよりもやや下方から見た雰囲気になる。
VectorWorksデータ:30-30.zip
手書き製図の場合はそのまま平面図と描きながら、図面を仕上げていく必要があります。この場合、手前の部分から描き始めます。
CAD製図の場合は、余分な線を消去して整理した平面図を、決めた方向と角度に配置します。レイヤは別にし、適当に着色しておくと良いでしょう。
VectorWorksデータ:axnmtrc01.zip
アイソメの場合の平面図
平面図を伸縮してアイソメトリック(30度-30度)の場合は、とりあえず平面図を左図の様に45度-45度に配置し、その平面図を伸縮します。
X方向 = 1.2247448倍
Y方向 = 0.7071067倍
平面図から鉛直上向きの垂線を引きます。このとき、高さ方向の寸法も同じく対象物の高さとなります。下方にあるものは、もちろん下方に向かって垂線を降ろし、位置を確認します。
図中は屋根スラブの下端の面(黒の点線)を確定したところ。屋根スラブの上端はここから厚み分の200mm上方になります。
VectorWorksデータ:axnmtrc02.zip
垂線で高さの寸法と位置を確認しながら、手前のものからどんどんと描いていきます。同じような手順を踏んで、全ての形を描いていきます。
複数の階がある場合は、その高さに相当する位置にその平面図を配置して描くと効率よく描けます。
VectorWorksデータ:axnmtrc03.zip
技法・解説:
壁・柱・梁の描き方
図面の着色
出来上がったアクソノメトリックには、着色や目地を入れても、着色を施すなどしても良いでしょう。
VectorWorksデータ:axnmtrc04.zip
技法・解説:
図面名称・縮尺の示し方
図面の着色
アクソメトリックは立体的な表現の割には製図が容易で、慣れれば短時間で描くことができるようになります。工夫次第でさまざまな表現が可能で、強力なプレゼンテーションツールになるでしょう。
下図はバルセロナ・パビリオンの基壇・柱と壁・屋根スラブの関係を示す構成図。点線で位置関係が把握できるように表現しています。
VectorWorksデータ:axnmtrc05.zip
また、水平面で切断した平面図を立体的に表現するアクソメや、垂直面で切断した断面図を立体的に示すこと、また中庭や吹抜などの一部分を取り出して描くこともプレゼンテーションとして有効でしょう。
このようにアクソノメトリックは様々な空間が立体的に表現できます。