計画。
建築では、「プログラムをたてる」「プログラミングする」というと、機能を計画すること、または、機能と空間を関係付けることをいい、これは、設計の前提条件となる部分として重要である。
たとえば、図書館であれば、「外部に面した明るい閲覧スペースと、それに連続する開架書庫をもち、それとは別の入り口をもつ喫茶スペースを併設する。」といった具合に、「閲覧スペース」「開架書庫」「喫茶スペース」という機能と、「外部に面した」「連続する」「別の入り口をもつ」という空間的特質を関係付け、計画することである。
設計のプログラムには、標準形として、広く採用されているものもある。nLDKと呼ばれる、住宅のプログラムが、その例として有名である。機能主義的な考え方から、機能と空間の関係が、合理的に整理され、標準化されたものだ。しかし、しばしば、建築家はそのような既成のプログラムを揺れ動かすための方法を模索する。
レム・コールハースは「錯乱のニューヨーク」(1999年, 筑摩書房)の中で、資本主義の欲望のエネルギーによって自動生成された都市では、フロアごとにプログラムの異なる、いわば「複合施設」が生み出されることに着目する。人の住む建築や都市は、機能主義的な概念から導かれる合理的な論理ではなく、もっと曖昧で非合理なエネルギーに支えられており、そのプログラムは、複合的であるというのだ。
このような考え方は、「プログラム論」とよばれ、機能主義を超える新しい論理としてもてはやされ、90年代には、日本においても様々に展開された。
日本では、プログラムというと、建築計画という同義語があり、建築計画学という分野が、「図書館」「美術館」などのビルディングタイプのプログラムを標準化してきたという歴史がある。ここで、「プログラム論」は、この制度的なビルディングタイプを解体する方法論として注目されたのだ。
プログラム論は、一種の流行として消費された感もある。建築空間の豊穣さは、プログラムの操作のみから生まれるものではなく、多分そこには、また別の論理をも必要とするのであろう。
プログラムとは、空間と機能を関係付けること、つまりは、建築と社会、制度の関わりを構築することでもある。建築は、社会的存在であり、その関わり方について、建築家は時代ごとに思想を展開してきた。建築を成立させるいくつもの要因のなかで、社会的側面として、プログラムを位置づけ、そこにコンセプトを持つことが重要である。
千葉市立打瀬小学校シーラカンス, 1995
「小学校の5原則」と名付けられた条件(プログラム)から、それに適応するボリューム配置や動線、アクティビティなどをを検討している。
出典:『プログラムと建築』, ja 1995年3月号, '新建築社'
関連用語:
ビルディングタイプ
アクティビティ