1. 学習の順序と履修条件
  2. レポートの書き方1
  3. レポートの書き方2
  4. 「論文・レポートを書くために」
  5. 雑誌の探し方

レポートの書き方2

レポートの書き方2(実践編)ー具体的な手法の説明と注意点についてー

■自分なりのテーマが上手く定まらないとき
 それでも自分の意見など出てくることもなく、どうしても書き始められないときは…、その際は、まずは教科書や参考文献で学んだことをまとめることからはじめ、最後に自分の意見を少し述べて終わりにするつもりでレポートに取り掛かれば良いでしょう。レポートを書く作業に取り掛るプロセスの中で、結果的に自分の意見がまとまることも往々にしてあるからです。読書感想文を書くぐらいのつもりで、教科書や参考文献の内容要約から始め、最後の200字ぐらいだけ自分なりの感想や考えを少し添える、そんな程度の楽な気持ちでペンを走らせましょう。レポートもやはり、頭だけで考えるのではなく、頭と体との両方で取り組むことが肝心です。自信がなくとも、ともかく無理矢理にでも手を動かして書き進めることで、徐々に頭の中も整理されてきます。
 ただし、この「読書感想文のつもり」で書いたものをそのまま提出しないでくださいね。その場合の評価は保証できませんから。これは最終的なレポートを書くための単なるウォーミングアップに過ぎません。少し邪魔臭いかもしれませんが、早いタイミングで十分なウォーミングアップをしておけばスムーズにレポートを書き進めることができるでしょうし、次の科目のレポートにも取り組みやすくなることでしょう。学問に王道なし。やはり、すぐに上手くレポートを書けるようなコツなんて無くて、1本1本の積み重ねることで、徐々に慣れてくるものです。
 ちなみに、最初はコンピュータなどを用いることなく、紙とペンから始めるのがお薦めです。紙とペンの方がより頭の中が覚醒化する気分になると思いますよ。一度お試しください。

■自分なりのテーマがある程度定まっているとき
 自分の意見がある程度まとまっている場合であれば、大学生のレポートらしく起承転結の形式にそって話を展開させればより高い評価も狙えるでしょう。また、起承転結の「転」の部分を省略して「起-承-結」と、少し簡素なかたちでコンパクトにまとめても良いでしょう。以下に起承転結形式の典型的な論の展開を簡単に示します。
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○「起」:まず冒頭に、課題の求めに対する自分なりの考えを簡潔に示す。
○「承」:教科書や参考文献から抜粋引用して、自分の考えをアピールする。
○「転」:ここでは一旦、自分の考えに対する反論や異なる立場からの見解も紹介する。
○「結」:これまでを振り返って、冒頭のテーマを改めてアピールして終わりにする。
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 これを参考に各パートに見出しをつけて、それぞれのパートで何を記述するか決めます。つまり、闇雲に冒頭から書き始めるのではなく、全体構成を考えてから書き進めることがポイントです。全体構成が定まっていればどのパートから書き進めても構いません。教科書や参考文献からの抜粋引用部分など、書きやすいことろから進めるとよいでしょう。

■「起」:仮説をたてる ー自分なりの考えを提示するー
 「仮説をたてる」と聞くととても難しそうに聞こえるかもしれませんが、要は「自分なりの着眼点で考えを述べる」と捉えておくと良いでしょう。つまりはこれから書くレポートのテーマになります。「結局のところ、私はこのレポートで何を伝えたいのか?」これをまずはっきりさせることから始まります。
 その際、そんな考えを持つに至った経緯を、自身の過去の経験や日常生活からの気づきに関連させて述べることができれば、独自性が強調できて更に良いでしょう。

■「承」:引用を用いて仮説を論証する ー自分なりの考えに説得力をつけるー
 自分の考えと同じような内容、あるいは自分の考えを補足してくれるような内容を、教科書や参考文献から抜き出して、自分の考えが間違っていないことも根拠とし、レポートに説得力をつけます。これを「引用」と言います。
 一方で、教科書や参考文献にある自分の考えと同じような内容を自分なりにまとめ直したり要約したりしてレポートを書くこともあるでしょうけれど、これはあくまでも「自分の考え」として位置づけられます。「引用」はオーソライズされた出版物などの記述を、出典を明記しそのまま抜き出して示すことで、「自分の考え」を援護する役割を果すものです。その際、様々な文献から少しずつ引用があって、自分の視野が広い範囲に広がっていることをアピールできると更に良いでしょう。

■「転」:別の視点から再検証するー説得力をさらに強化するー(オプション)
 これはなかなかテクニカルで難易度も高い部分ですから、無理に盛り込まなくても構いません。「転」を省略して「起-承-結」とコンパクトにまとめても良いでしょう。
 さて、ここでは一旦、自分の考えに対する反論や異なる立場からの見解をも紹介します。もし、異なる立場からの見解であっても、「自分の考え」を否定するものではないとなれば、その正しさを更にアピールできるし、より強い説得力をもつことになります。そのためには、数多くの参考文献を読んでおいて様々な見解や考え方の広がりを事前に感じておく必要があるでしょう。なので、何本かレポートを書き上げたあとや、いろいろな書籍を読んだあとの方がチャレンジしやすいでしょう。

■「結」:結論をまとめるー自分なりの仮説が実証できたとして終えるー
 以上のような流れの結果として、冒頭の自分の考えは決して間違ってはいないことをあらためてアピールして終わりにします。この際、自分なりの考えを無理にゴリ押しすることは逆効果になります。これまでの流れのなかで抜け落ちていた視点やまだまだ論証が不十分な点を自分自身で指摘し、謙虚な姿勢を示すと良いでしょう。あるいは、今回のレポートをより広い範囲へ発展させる展望を述べることができれば更に良いでしょう。

■最後に
 ここではレポート作成についての概略をまとめました。さらに詳しく書き方の手順が知りたい場合は、皆さんの手元に送られている「学術基礎」の教科書や補助教材を一読ください。100ページほどの薄い本なのですぐに読めると思います。その他、今回の原稿をまとめるにあたって参考にした書籍を以下に紹介しておきます。いずれも本学図書館に収蔵されています。
○学内参考サイト
『airU学習ガイド』 > 「論文・レポートを書くために」
http://w.guide.air-u.kyoto-art.ac.jp/wp-c...
○参考文献
吉田健正著「大学生と大学院生のためのレポート・論文の書き方, 第2版」ナカニシヤ出版, 2004.
櫻井雅夫著「レポート・論文の書き方上級, 改訂版」慶應義塾大学出版会, 2003.
河野哲也著「レポート・論文の書き方入門, 第3版」慶應義塾大学出版会, 2002.
木下是雄著「レポートの組み立て方」筑摩書房 1990
清水幾太郎著「論文の書き方」岩波書店, 1969