フィールドワークのまとめ方の参考作品として昨年度までの課題も掲載しております。マッピングの仕方やまとめ方など参考にしてください。
「環境デザイン演習[建築]III-1 地域のコミュニティセンター_敷地の提案」では、皆さんのよく知る地域に、その場所ならではの人の集まる地域のコミュニティセンターを新たにつくるというテーマのもと、フィールドワークを行いながら「場所」について問題設定を自ら行い、それに応えるように具体的な空間を設計するという一連の設計プロセスについて学びます。 緻密なリサーチとそれに裏打ちされたソリッドなアイデアで課題(シナリオ)を独自に設定し、それぞれストーリーに見合った説得力ある空間を具現化する卒業制作の予行演習のような課題となります。 大切なことは、どこにでも当てはまるようなステレオタイプなアイデアを探すのではなく、フィールドワークを通して自分だけの、その場所にしかないアイデアを発見すること、そして小さな発見をひとつひとつ積み上げながらジャンプすることなく、説得力あるストーリーを展開することです。 地図の作成については、ベースとなる白地図のレイヤを道路や建物などの情報ごとに区分し、プロットする項目に応じて表示/非表示を使い分け、リサーチ結果を効果的に表現、分析することをスタディしてください。(望月公紀)
「場所の観察結果のマッピング」について
制作条件(シラバスp152)に挙げられた「場所の観察結果のマッピング」について、ひとつのレイアウト例を参考として提示します。 ここにあるように、観察結果の表現された成果物としての地図を羅列するだけでなく、 ・観察項目の分類や属性の説明 ・観察結果を地図として表現するための手続きの説明 ・観察された状況を示す写真などこれらを併せて記述することで、人の流れや交通、緑や建物の高さ等々の項目ごとの地図作成プロセスのわかるシート構成としてください。
注)2015年度以前の作品ですが、フィールドワークの仕方やマッピング等の参考にということで掲載しております。
非常に緻密な「場」の観察がとても分かりやすくまとめられ、プロセスの表現という点からもまさに模範となる作品である。もともと「場」のもつ潜在的な力を自分なりに解釈した上でリサーチ項目の詳細が定められているため、より深く掘り下げた洞察が行われていると言える。シナリオスケッチの項には、マップの中にもう少し分析の痕跡を表現として残してもらえればと思うところはあるものの、場の断面特性を利用しようとするアイデアもこの場所ならではということが感じられ可能性を感じる。
(担当講師 : 岸川謙介)
【参考にする学生のみなさんへ】敷地のリサーチ項目やマッピング表現などについては、過去の参考作品も必ず参照してください。
ーーーーーーーーーーー以下教員のコメント
「場」の持つ潜在的な力を、直感的に、もしくは、経験的に理解して、親子のための居場所の新設を提案している力作である。「場」の提案するプログラムありきで行ってしまったのか、または、よく知っている場所だからこそ省略してしまったのかはわからないが、観察の表現としては、やや観察項目が不足しているように感じる。この課題では、改めて観察してマッピングすることで、場の力の再発見や再確認をしてほしいと考えているので、その点は少し残念である。
選定した敷地だけでなく、その周辺の環境とも呼応して地域に根ざした計画になる可能性を感じさせる。シートのまとめ方は美しくて見やすく他人への配慮があり、そういった感性が計画にも反映されることを期待する。
(担当講師 : 小杉宰子)
注)2015年度以前の作品ですが、フィールドワークの仕方やマッピング等の参考にということで掲載しております。
地理的要因に大きく構造が規定されるエリアとはいえ、場の観察を通して得られたそれぞれの地図によって、極めて簡潔かつ的確にこの場所ならではの特徴が捉えられている。アクティビティの分布については、日常と非日常という独自の分類の視点を導入することで、そのプラットフォームとなる場所の性格にダイレクトに結び付けようとするアプローチが面白い。唯一残念な点は、「空間の質」を表現する配置図やスケッチが無いことであり、どのようなイメージの建築を目指しているのか、もう少し提示できると素晴らしい。
(担当講師 : 田村秀規)
注)2015年度以前の作品ですが、フィールドワークの仕方やマッピング等の参考にということで掲載しております。
この作品は巨視的な視点から、また細やかな視点からもよく観察され、有意義なフィールドスタディが行われています。 きれいな敷地図に加え、敷地模型やスケッチも交えてわかりやすく表現されており、プレゼンテーションもたいへん美しいです。 次なる課題として、「この地域固有の問題」を解決するための「特別なシナリオ」を模索して欲しいと思います。
(担当講師 : 中西ひろむ)
注)2015年度以前の作品ですが、フィールドワークの仕方やマッピング等の参考にということで掲載しております。
大勢の観光客や鹿が自由に往来する奈良国立博物館敷地内の緑地をリサーチしている。「グループの人数ごとに分けてプロットした 人口分布」「人の行動を動、止、休の3パターンに分けてプロットした分布」 等、敷地の現状をよく捉えて時系列で細やかに観察し、 マッピングしている。周辺環境についても、針葉樹、広葉樹の分布/緑地帯と水域の分布/直射日光のあたる部分と日陰部分の 分布など、多角的な視点から丁寧に観察している。提案がやや大雑把な仕上がりになっているのが非常に惜しいが、リサーチの 精度は素晴しい。今後もこの観察眼を大いに活かして制作に取り組んでほしい。
(担当講師 : 北川文太)
※2017年度の参考作品
情報を分析し的確に表現している好例。グラフィックとしても美しくまとめられている。特に佇む人のマッピングは経時変化を写真とともに的確にグラフィックにしており非常に素晴らしい。太田市美術館図書館などを事例参照し、計画学的にプランニングしていてとても良く、シングルラインだが図面表現もわかりやすい。欲を言えば、この街に本当に相応しいプログラムであることの説明をマッピングを通してもう一歩踏み込んで欲しかった。
(担当講師 : 望月公紀)
※2017年度の参考作品
井の頭恩賜公園の中でも既存の森に対する環境負荷の最も少ない敷地を選定した配慮も去ることながら、フィールドワークを丁寧に行っており、美しいプレゼンテーションから作品の素晴らしさがひと目で伺える力作。マッピングにつてはアクティビティの発生状況が欠けてはいるものの、全般的にわかりやすくまとめてあり、シナリオに繋げようとする高い意識が読み取れる。
特にシナリオスケッチが素晴らしい。地域のニーズとしての「食の提供」を主軸に、子供と高齢者の交流を促進するというシナリオを、単なる構想レベルに終始すること無く、三鷹市の待機児童問題や高齢者の雇用創出まで踏まえた上で、開館時間や運営形態まで具体的、かつ無理なく実現可能なレベルまで展開した辺りが非常に参考になる点であろう。
(担当講師 : 田村秀規)
※2017年度の参考作品
全体的にプレゼンテーション密度が高く、積極的に模型を制作して検証している点が素晴らしい。マッピングはアクティビティの発生状況についても触れてほしかったところであるが、それ以外は緻密によく考察している点も良い。
シナリオスケッチで目指していた既存緑地のある屋外広場の「気軽な利用」や、パブリック・プライベート分布で指摘した「通り抜けを良くすること」、「開放の必要性」などが、都市型施設の計画において十分反映されていないことが残念であるが、図面を丁寧に描いている点、ゾーニングを示すダイアグラムなどは是非参考にしてもらいたい。
(担当講師 : 田村秀規)
※2017年度の参考作品
グラフィックとして美しく、わかりやすいマッピングの好例。シナリオについては少々強引な印象もあるが、論理的に筋が通っているので納得できるようにまとまっている。計画学的なプランニングも丁寧にしており、ダイアグラムと色を対応させた図面が非常に見やすく良いプレゼンテーションである。
(担当講師 : 岡本一真)
Q. 縮尺をどう設定したら良いかわかりません。どの程度の範囲をトレースしたら良いですか?
A. A4に納まる程度の範囲内で、ご自身のシナリオを十分に説明できるような範囲で見やすい大きさの地図をいくつかのスケールで出力してスタディする必要があります。描きすぎてもわかりにくいですし、街区だけのような縮尺でもわかりにくい場合もあるでしょう。参考文献に挙げられている事例を参考にし、プレゼンテーションに適した縮尺とはどの程度の縮尺なのかを自ら学び訓練して頂きたいと思います。
Q. 自分なりのマップの表現とは、どんなものでしょうか。
A. 地図を全部トレースするのでなく、表現したい情報を抽出して表現するといいでしょう。例えば、 「動線」ならば線や矢印、「分布」ならば点描、「ゾーニング」なら色分けなど、項目に適した明 解で美しいビジュアル表現を試みてください。