この課題では、特徴のある敷地に複合施設を設計します。敷地から読み取った情報などをもとに、街の一部としてどうあるべきかという俯瞰的な視点から設計を考えることと同時に、「図書室・託児室・こども食堂」の3 つの機能の関係の築き方を考えることを求めています。
建築は、周辺に影響を与えずに存在することはできません。積極的に調和する、もしくは街に異物を挿入することである効果を期待することも可能ですが、どのような考え方をしたかということが重要であり、それが設計に影響しデザインにも反映されるはずだと考えています。
一方で、複合することでしか生まれない関係性やそれに伴う空間の提案を期待しています。そのためには、各機能が持つ一般的な設計上の特徴や問題点を把握している必要があり、それらを踏まえたうえで、どのような新たな関係性の空間が生まれたのかという答えを提示することが重要です。
また、当然のことですが、機能面や構造、設備についてそれなりの配慮がなされ、図面化された上でプレゼンテーションするという過程を踏むことになります。
これらはお互いに阻害し合うものではなく、衝突する部分を解こうとする中で新たな解や提案が生まれることが珍しくありません。無難に課題を解くことに安住せず、積極的に取り組んでいただければと思っています。(望月公紀)
注)旧課題(条件)の参考作品です。最新の制作条件はシラバスで確認してください。
曲線を多用した柔らかな造形が特徴的な作品です。手描きのドローイングを中心としたプレゼンテーションは十分な時間を掛けた成果を感じさせ、とても好感が持てます。
ただ、断面計画はやや短調で、平面的な造形の面白さが空間として生かされているかは疑問が残ります。そのあたりをどう克服するかが今後の課題となるでしょう。
(担当講師 : 植南草一郎)
注)2015年度以前の作品ですが、スタディの仕方やプレゼンの方法などの参考にということで掲載しております。
敷地周辺に元々ある道の延長に、建物の中へ導く路地をつくって街と施設をつないだ構成が良い。平面の設計はとても丁寧にできている。 外構の計画は機能的ではあるが、周辺の環境に対しての配慮をしてほしい。イメージドローイングはもう少し丁寧に。
(担当講師 : 西川博美)
注)2015年度以前の作品ですが、スタディの仕方やプレゼンの方法などの参考にということで掲載しております。
このまちにとっては巨大な施設を、小さなボリュームに分割して広場を囲むように再集合させた計画。中庭を囲む回廊型の縁側空間とは別に道路側にも小さな庭を点在させ、まちとの関係をそれぞれに築こうとしている。縁側空間を屋内としたままでよいのか、デイケアセンターの車寄せや、図書室以外の上下足の考え方など考慮すべき点は残っているが、人々がこの場所で滞留したくなりそうな仕組みが提案されつつあり、今後の展開に期待したい。(*わかりやすいように赤入れした状態のものを掲載させていただいています。)
(担当講師 : 小杉宰子)
注)2015年度以前の作品ですが、スタディの仕方やプレゼンの方法などの参考にということで掲載しております。
どのようなコミュニティセンターにしたいかという強い意思が示され、それが平面計画やかたちに明確に表れている。もうひとつのテーマ、複合する意味についても考えが及びそれがプランに反映されている。複数の施設が集まるからこそ生まれる共用の空間の扱いがうまい。「自由に出入りできる」点で町に対してまだ閉じている感があるので、中庭への開き方と同時に町との繋がり方について、視線の抜けだけでない関係を模索してほしい。
(担当講師 : 小杉宰子)
※2017年度の参考作品です。
木造密集地の周囲の環境に建築を斜めに配置することで周囲から一歩引いた形をとることで広場を大きくとっており、3階立ての図書館を周囲によく見えるようなシンボリックな大きさとしながら、機能的に無理なく分棟をつなげている構成が素晴らしい。外構を上手に分断し、セキュリティを考慮しつつ、建築として非常に伸びやかなおおらかな印象を与え、周囲と建築の距離感を上手にデザインしている点も良い。また、空間への名前のつけかたもとても魅力的である。こびとスペースとかそらまめ食堂とか…。地域の人々に愛されそうな細やかな配慮も良い。
(担当講師 : 望月公紀)
Q. 敷地模型を作成する際、近隣の住宅や建物の高さはどのように調べればよいでしょうか?
A. 該当部の住宅地図を入手して階数を調べ、階高を住宅で3m、ビルで4m程度で仮定し、大雑把に算出し、模型や図面に反映させます。 住宅地図は、この課題の敷地は東京都墨田区ですので、東京都内の公立図書館であれば常備しているところが多いでしょう。 また、ゼンリン住宅地図プリントサービスや、 ゼンリン住宅地図サービスから、 必要な部分だけを購入することも可能です。最近では、グーグルマップのストリートビューや航空写真で階数や屋根の形状を判断することも可能に なってきています。
Q. ピロティなどの半屋外空間は床面積に含まれますか?
A. 床面積とは、大雑把にいえば、屋根が掛かっていて、壁や柱などで囲まれた空間の面積である、と言えます。ピロティなど屋根が掛かっていなかったり、壁や柱などで囲まれていない空間は、原則的に床面積には含みません。
ただし、現実の法の規定ではピロティなどの半屋外空間でも、その形状や構造、規模や用途によって床面積に参入する場合もあります。課題ではあまり細かいことまでは求めないことにしていますが、興味があれば建築法規の教科書や法令集などをあたるとよいでしょう。
Q. 図面を描く時にどのような資料を参考にすればいいですか?
A. テキスト指定の日本建築学会編『第3版コンパクト建築設計資料集成』(丸善)が適当でしょう。い ろいろなビルディングタイプ別に豊富な実例図面が載っていて、単位空間別に編集されているので、 例えばエレベーター機械室の寸法が知りたければ、その項目を引けば寸法や実例が出ています。ま た、『デジタル教科書「建築学習memo」』の「図面製図マニュアル」も参考にしてください。
Q. 建物の壁など、厚みの一般的な決め方について教えてください。
A. 壁厚に関しての質問ですが、構造、規模などにより様々です。壁の厚みは基本的には構造体、下地 材、仕上げ材のトータルで決まってきます。また、その壁が耐力壁か非耐力壁かによって厚みは異 なります。仕上げを含んだおおまかな目安としての数値を以下にあげておきます。 1)木造:一般的に使われる柱は120mm角か105mm角。大壁(柱仕上げで隠す)か真壁(柱を見 せる)にするかの違いはありますが、大壁で想定すると、外壁:200mm程度、間仕切壁:120mm程度。 2)鉄骨造:中小規模の建物で使われる柱は角パイプかH型鋼で100mm×100mm~200mm× 200mm程度。梁せいはスパンの1/20程度。外壁:200mm程度、間仕切壁:120mm程度。 3)RC造:RCラーメン構造では柱の太さはスパンの1/10程度、梁せいはスパンの1/10程度、梁幅 は梁せいの1/2程度。スラブ厚は150mm程度。柱間の壁厚は150mm程度。RC壁式構造は外壁、 間仕切共200mm程度。