グリッドGrid System


方眼などのマス目に見られるような、格子状に直行する線をグリッドといい、建築の平面計画においては、柱割や壁配置の基準となるラインとして用いられている。
グリッドは、プランニングに一定のシステムを与えることとなる。そして、そのシステムは、建築の成り立ちを根底で規定する要件のひとつとなるため、グリッドをプラニングに採用する場合は「グリッドをどのようにとるのか」を検討することは、大変重要である。
材料の使い方や工法のシステムを決定するグリッドの例として「シングルグリッド」「ダブルグリッド」と呼ばれるものがある。「シングルグリッド」とは、グリッドを芯として柱や壁を配置していく方法で、「ダブルグリッド」とは、壁や柱などの構造体の厚みにあたる二本のラインをグリッドとして設定する方法である。
前者のシステムは構造材間にモデュールが与えられるため、その工法においては、構造・躯体が優先的に扱われているといえる。後者は部屋内にモデュールを与えるため、畳のような部屋内に使用する材料の寸法が規定される。ここでは、部屋の広さにプライオリティが置かれることになる。
「ダブルグリッド」のような方法は、近年ではあまり見られなくなったが、日本では、古くから関東で「ダブルグリッド」関西においては「シングルグリッド」が採用されてきた。「京間」と呼ばれる関西の畳が、「関東間」と呼ばれる関東の畳よりも大きいのは、この違いに由来する。部屋の広さを畳の数で表現する日本独特の、グリッドシステムであるといえるだろう。
01 シングルグリッド(左)とダブルグリッド(右)ダブルグリッドはシングル・グリッドがずれて重なったもの。
また、近代においては、ミース・ファン・デル・ローエに代表される建築家が、数学のX-Y平面のような均質なグリッドを採用し、ユニバーサルスペースとよばれる空間性を志向したことが有名である。建築の内外が無限定に連続していくような空間の獲得が目指されたわけだが、均質グリッドは、その空間性を根底で支えるシステムとして働いていたといえる。
一方、このような近代建築の流れとは一線を画したといわれるルイス・カーンは、単純に均等な線が直行するグリッドではなく、二本が対となって均等なモデュールで連続するグリッドを好んで用いた。代表作「キンベル美術館」において、グリッドはヴォールト屋根を支える柱のラインとして用いられている。このヴォールト屋根に覆われたリニアな空間は、グリッドが対になっているため、連続しながらもそれぞれ独立した構造を持っている。このとき、屋根や柱は、空間を分節する役目を果たす。ここにみられるカーンのグリッドは、ユニバーサルスペースのような、全体に無限定に人が移動する空間ではなく、人が中に留まるような空間性を生み出すためのシステムとして意識されている。
これらの例から、グリッドによる空間のシステムが、近代建築の歴史の中で、その特徴的な空間性を獲得する重要な鍵として働いてきたことが伺われるであろう。
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Luis I. Kahn, Fort Worth Kimbell Art Museum, 1972ダブルグリッドによる平面計画。 出典:原口秀昭『ルイスカーンの空間構成 アクソメで読む20世紀の建築家たち』,1998, '彰国社' 関連用語:
モデュール スパン ユニバーサル・スペース ゾーニング R(アール)