みなさん、こんにちは。業務担当非常勤講師の岩田です。寒い週末になりました。京都でも雪が降りましたが、みなさんのお住まいの地域は大丈夫でしたでしょうか。
久しぶりに森浩一先生の新書を読み直しました。
森浩一『古墳の発掘 増補版』中公新書、1972年(初版は1965年)
ずいぶん前に購入し、すっかり内容を忘れていたので、新たな気持ちで読みました。私が大学に入学した頃はちょうど考古学ブームで、森先生に憧れて考古学を学びたいという学生が多かったことを思い出します。
内容は、①古墳研究の歴史、②古墳の謎や諸問題、③古墳の破壊に分けられます。①②ともに、私のような考古学の初学者にわかりやすく書かれており、興味深い内容です。今あらためて読むと、森先生が古墳の保護運動に奔走し、実際に体験されたことに基づいて書かれた③がもっとも衝撃的でとても印象に残りました。
2019年に百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録されて記憶に新しいですが、大阪南部でも戦後から高度経済成長期にかけて、開発の波が押し寄せる中、多くの古墳が破壊されたという事実が生々しく描かれています。驚くのは、この本が出版された1960~70年代に起こっていた、現代の社会問題として、古墳の破壊の現状を述べている点です。
③は現在では、戦後の古墳の破壊・保存運動についての貴重な記録という性格を有していると思います。関心のある方は是非お読みください。ただし、新本はもう入手出来ないようなので、図書館で借りるか、古本をお求めください。
〈目次〉 *増補版(1972年)のもの
発き掘られるもの
古代人の悲劇
盗掘された御陵
古墳研究のはじまり
水戸黄門の古墳研究
仁徳陵の発掘
英人ゴーランド以後
墳丘・棺・死者
「前方後円」の古墳
墳丘の規模
棺の諸問題
死者の世界
失われた死者を求めて
タブーの天皇陵
古墳の破壊
東海道新幹線と名神高速道路
古墳をねらう土建業者
古墳の運命
*山田邦和「森浩一『古墳の発掘』」(『日本史研究』688号、2019年)
「特集 戦後歴史学の著作を読む(5)」で本書が取り上げられています。本書の魅力や価値について、詳細に書かれています。本書についてもっと掘り下げたい方は是非お読みください。