いまは閉店しているようだが、もとは花屋さんだったらしい右の建物も、原型はおそらく左の刃物屋さんのような伝統的な日本建築のたたずまいだったと想像される。
一見したところこの町屋の表面は、昭和初期などに流行したいわゆる「擬洋風」の文脈上にある「石張り」の衣装をまとっている。
かつて洋風信仰の中で価値観が混乱し、「和のスタイル」または町屋の暮らしを正面から見つめることに市民が自信をもてなくなった時期があった。その過程で実は多くのものを見失ってきた例も多い。しかしながら、そのような中でもいくつかの例外がある。これなどは周囲の和の文脈と不思議なマッチングを見せており、そんな背景を考えさせられる例だ。おそらく一番の要因はプロポーションが揃っているせいであろう。
写真:西陣の町家
パラペット
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一般的に「看板建築」と一蹴され、「形態は機能に従う」的機能主義者から徹底した糾弾をうけたパラペットも、80年代に入ってからいわゆるポストモダニストたちの「引用」の名のもとに復権したかのようだ。しかしながら、「ありかたの記号性をまとう」という意味においてはパラペットの範囲は俄然拡がることになる。
【四条通りの食品店】
伝統の上に脈絡なく被せられた現代という衣装
【映画村】
非日常空間であるが故のノスタルジア。
書割りのテーマパーク、映画村というパラペット、そして本物の町家群との間に横たわるものは何なのか、じっくりと考えてみよう。

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