さがす 【探す】

空間はどこにある?

わたしたちはどんなところを「空間」だと思うのでしょう。

例えばあなたにとって、電話ボックスの中は空間でしょうか。部屋の中、電車の中は。また廊下や公園、道はどうでしょう。あるいは音楽や映画に空間を見ることはないでしょうか。そしてそのとき空間か、そうでないか、あなたの判断の基準になったのは何でしょうか。 周りが囲われているからでしょうか、居心地がいいからでしょうか、それとももっと明解な基準があるのでしょうか。

本書では建築の空間を話の展開の中心に据えることを前提としていますが、この前提たる建築について、建築をおこなうとは何をすることなのか、建築はわたしたちに何を与えてくれるのかを考えてみるとそれは全てわたしたちの生理と精神、いい換えるならば心と体への保障といえるような気がします。
そこでわたしたちは包まれることで心身の安定を得ていると考えられる、ここではそんな包まれた状態を空間として考えてみたいと思います。

わたしたちはこれから読むことを通じてわたしたちに共通の空間の概念を持とうとしている訳ですが、空間ということばは建築の用語として使われると同時に、日常から哲学に至るまで様々な場面で用いられるので、ひとによって、あるいは時や場合によって判断もその基準になった感覚もそのニュアンスは色々と異なっているはずです。
そのような差異やずれを乗り越えるべく、みなさんには共通の概念を目指してこのあとに述べる話を参考に自分の空間に向かって経験を掘り下げていってほしいのです。そういう意味でいま空間はどこにでもあるし、また、どこにもない状態にあるといえるでしょう。

京都市左京区北白川(写真:加藤恭子)