人類が発明してきた情報系のものは、言葉、文字、印刷、音楽、ラジオ、テレビ、コンピューターなど、音と映像の2つからなり、人の目と耳という器官に対応する。この分野の技術革新は現在、最も急激に進行中である。今後とも様々な変革をもたらすであろう。
一方、物や空間系のものは、火であり、道具や布であり、土を焼固める技術、金属の精練、コロや車輪の発明、土木術、建築術などなど。手で使う道具は手の機能の拡張であり、乗り物は人の足の機能の拡張、すなわち肉体の拡張であった。しかし、そのかたちは、まったく異なったものになっていった。その理由は、自然の生命体は関節があり、血管のようなエネルギーを伝達する仕組みや神経という線状のものでつながっているので、回転し続ける車輪のようなメカニズムは存在しなかったのである。この回転する仕掛けに石炭や石油によるエンジンが加わって、実に様々な機械が発明され、現在にいたる。それまでの家畜の力や水車や風車というエネルギーは駆逐されていったのである。
そして今日の私たちのくらしを支えている装置の多くは電気エネルギーで動いている。モーターを回転し、加速減速し、様々な機械的メカニズムによってその機能を果たす。さらに熱や光、音、圧力や時間といったセンサーとマイクロコンピューターが人の判断なしで、自動的に電気をオン・オフするのが当り前になりつつある。単純な機械に感覚機能がつき、頭脳がつきつつあって、人の能力をはるかに凌駕しつつある。それは、ほとんど中味の見えないブラックボックス化への道であるともいえよう。それでも、人のくらしに必要なものは、すべて地球という自然からの恵みである。それを壊さぬ文明とはどんなものであろうか。
|