水面がつくる水平線と下げ振りを糸で垂らしたときにできる角度は直角になる。これは地球に重力が存在するからであり、いつでもどこでも、この力が働いている。従って、直角を含む四角形である長方形・正方形は、垂直面でも水平面でも、もともと整合性がよい。3:4:5の三角形を描くと直角三角形ができることは古代から知られている。この直角を出す技術と四角のコンビネーションは最も有用な造形法であった。おもりを垂らした垂直線と気泡を利用した水平線がその道具となる。こうして生まれる縦横の線は、建築のような人間に対して環境的である空間をつくりだすため、壁や柱をたて、床や屋根をつくる。この自重をささえるための垂直性と広がりのための水平性は、このようにして確保できる。
このような水平垂直から始まった直線の四辺形は、水平面に広げたときも様々な利点がある。平面を同じかたちでうめつくすことのできるパターンには三角形や六角形もあるが、四角形の直角を含むかたちほど使いよいものはない。地割りをするにも、京都のような都市計画にも90°のグリッドが明快に使われてきたのは人間的な理知的形態だと考えられてきたからであろう。
また隣り合ったかたちどうしにもヒエラルキーがない。あるいは太陽は東から昇り西に沈む。太陽の光は南からさし込むといった東西南北という地球の動きからくる軸線も直角のグリットを明快にしている理由であろう。かくして、x、y、z軸の直交座標と四角の形はあらゆるところにある。 |