【学習のポイント】テキスト科目「デザイン基礎1・2(情報デザイン)」
みなさん、とかく基礎学習とは退屈で面倒なものだとお思いでしょう。反復や暗記など、まるで苦行のようだなと、苦手意識を持たれる方も多いことかと思います。ではそのおもしろさとは何か。そのひとつ、それは物事の構造を捕まえることにありそうです。絵を描く基礎修練の代表、それはデッサンでありましょう。その目的は、対象を忠実に観る力の涵養です。ピカソのキュビズムは、培われた画力があればこそ到達できたスタイルでしょう。また現代絵画を切り開いたカンディンスキーは、造形の諸要素を点・線・面へと分解しました。近年、それらを再構築した形態や色彩のトレーニング法が、あまた生みだされています。
基礎とは元来、建築の用語です。太古、それは木や土や石の建物から始まり、近代には鉄筋コンクリートという新技法が発明されました。いずれの素材を用いるにおいても、基礎とはその建造物の自重を支える礎(いしずえ)を表します。そこからこの語は、事物が成立する際の基本という一般用語へと推移します。そもそも家とは、柱が立ち、壁を囲み、屋根で覆われている。このような基本構造への眼差しは、物事の成り立ちの根本を問う行いです。私たちは古代の遺跡に、風化による骨組みの美を見ることができます。かつて建築家のエッフェルは剥き出しの鉄筋で塔を計画し、またプロダクトデザイナーのイームズはワイヤーフレームによる椅子をデザインしました。それはスケルトン(骨格)を魅せるという、新たなデザイン思想へとも至りました。
私たちが取り組む情報デザインは、視覚のみならず五感を動員するという、総合活動に変遷しています。またその内容は、より社会性を帯びたものになりました。情報デザインコースTW科目「デザイン基礎1(情報デザイン)」の課題は「辞典」そして「デザイン基礎2(情報デザイン)」では「自伝」と設定しました。それらは対の概念となっており、情報の享受と提供という、現代デザインの有り様を意識したものであります。社会にとってまた自身にとって「デザインの基礎とは何か」を、ぜひ問うてみてください。本課題に取り組むこと、それは自らの立脚点ともいうべき、堅牢な足場固めへとも至りましょう。建築や都市のみならず、全てのデザインは設計を意図します。今後、自らの「家」をしっかり建てるべく、まずは楽しく基礎作りから始めてください。
岩崎正嗣