【学習のポイント】テキスト科目「情報デザイン演習I-3(イ)イラストレーション1」

私が育った時代はキャラクター成長期。ドラえもんに始まりたくさんの名キャラクターが産まれていきました。キャラクターグッズを集めることが大好きだった学生の頃、私が描いていたものの多くはやはりキャラクター。顔やプロポーションをいかにかわいく描くかに一生懸命、そんな時期も大切だったなぁと懐かしく思います。

そこそこ満足できる程度に描ける様になった頃、ひとつの悩みができました。それはかわいいだけで「個性がない」ということ。人物や動物のフォルムというのは、基本誰が見ても同じ形ですから、当然どこかで見た様な絵になることが多々あるものです。それなのになぜ個性的に見える絵と、そうではないものがあるのでしょう。私はそれに随分悩みました。皆さんの中でも同じ悩みを持つ方がいらっしゃるのではないでしょうか。

その後、私の見つけた答えのひとつが「情報」でした。

例えば、高校の制服を着た女の子を描くとしましょう。わざわざうしろに校舎を描かなくても、制服だからそれが高校生だとわかりますね。それは制服が「情報」だからです。次に同じ方法で女の子の詳しい情報を加えながら描いてみます。髪型、スカートや靴下の丈、キーホルダーなどの流行で年代が表現できます。服装や日差し(影)や風景を使って、季節・時間・空間を。それが冬なら冷たい空気にさらされた頬の感じをイメージしてみましょう。その子の性格や交友関係は、手に持っているものなどを使いましょうか。例えば憧れの先輩から買ってもらった、温かい缶コーヒーを大事そうに持っているとか。それが懐かしい過去のイメージなら、ノスタルジックな色合いにしてみてもいいかも...などなど。

どうでしょう、女の子の個性が見える絵が描けそうな気がしませんか?改めて皆さんが個性的だと思う絵を、じっくり見てみましょう。「情報」を持ったアイテムがあり、そこから作者の世界観が感じられるのではないでしょうか。私はそれに気がついてから、絵を描くことがもっと楽しくなりました。課題は、普段から身のまわりを観察し、表現に必要な情報アイテムを増やすことで、皆さんのスキルアップを目指すトレーニングです。写実的にスケッチすることで、素材そのものの「らしさ」を追求します。それはイメージの貯金です。それが多ければ多い程、のちに皆さんの表現を助けてくれることでしょう。

また指定された画材を必ず使うことを条件としています。使ったことのない画材にもチャレンジして経験値も高めて欲しいと思います。

進め方のコツは一日何枚と決めて、毎日自分で決めた適量を。学ぶことは食べることと似ています。いっぺんに同じものを食べると嫌いにもなるし、噛まずに雑に食べてしまうと、おなかを壊し栄養は身体に残りませんね。バランスよく適量を丁寧に食べる方が、身につくのと同じ様な気がします。

イメージを想い通りに表現できるようになったらどんなに楽しいでしょう。はじめはうまくいかなくて当たり前です。どれだけ自分が成長するか、ワクワクしながら取り組んでください。

山下光恵