【卒業生からのメッセージ】横川正美さん(2015年度卒業生)
以前、高齢の方にメイクをした時、鏡に映る自分の顔をじっと見て照れくさそうに微笑んでいました。思ってもいなかった表情で喜んでくれた姿は私にとって忘れられない出来事でした。メイクという日常的に当たり前の行為をこんなにも喜んでくれたのがとても印象的でした。チャンスがあればメイクをして喜んでもらえたらと思ってはいましたが、その機会はなかなかありませんでした。ところが昨年、卒業制作という形で実行することができたのです。そして、この制作をきっかけにやりたいことがみつかったということをお伝えします。
私のこれまでの制作への取り組みを振り返ると、多くが「女性の生活」に関するテーマでした。卒業制作を前提とした課題「情報デザイン演習 Ⅲ.1」(自主テーマ研究のためのアイデアノート)の制作も同じように女性の好むようなテーマを考えましたが、メイクのことは全く気付かず終えました。後になって本当に自分がやりたかったことを見直した時、いつかやってみようとずっと心の中にあったメイクのことを思い出したのです。それを卒業制作のテーマにしようと考え、とにかく「あの笑顔を伝えたい」という思いを形にするための作品制作に取り組みました。そして記録として残せる写真集「心粧.こころ よそおう.」を仕上げることができたのです。何を制作すればよいのか、何をテーマにすればよいのか考えても考えても思いつかなかったことが、あの笑顔のおかげで、やりたいことが一気に頭の中を駆け巡り、このチャンスを逃したらきっと後悔するだろうと思いました。未知からのスタートでしたが、制作手順や考え方を学んだことを軸に自信を持って進めることができました。
作品審査発表後の展示を終えると、ずっと心の中にあったことが実践でき、写真集という形で表現できたことに達成感がありました。そして、この制作をきっかけに高齢者へのメイクボランティアを始めました。好きなことをして喜んでもらえるという充実した時間が取れるようなったのは、制作を通して伝えたい思いがあったからだと思います。そして、メイクの力がこんなにも素晴らしいことだと実感した私は、専門的な知識を増やし、メイクだけでなくトータルで美を考えてみようと2016年秋に美容専門学校に入学しました。もしこの制作をしていなかったら考えもつかなかったことかもしれませんが、この体験で本当にやりたかったことが見つかったのかもしれません。新たなことに挑戦するのは不安だらけですが、自分で決めた道を信じて進んで行こうと思います。笑顔は伝達するといいますが、多くの人に伝わるような活動をこれからもライフワークとして続けていきたいと思います。

卒業制作作品 写真集「心粧 こころよそおう」

卒業制作展風景