【卒業生からのメッセージ】藤本千里さん(2013年度卒業生)
「『考える』という力の大切さ」
10年以上前になりますが、私は某大学で染織を学んでいました。授業では基本的に身の回りの植物などからヒントを得て、テキスタイルのデザインに落とし込んでいくのですが、当時の私は何が良いデザインで何がダメなデザインなのか、日に日にデザインとは何なのかという疑問が頭を巡るようになり、モヤモヤする日々をおくっていました。結局、「染織」に面白さも見出せず、他の理由も相まって大学を辞めてしまいました。
月日が経ち、寄り道をしつつも何とか自身の興味のある分野で働くことができるようになったことをきっかけに、もう一度デザインというものをきちんと学びたいと思うようになり、京都造形芸術大学通信教育部の門をくぐりました。
大学の授業はどの授業もユニークで、そして新鮮でした。元来怠け者の私が仕事と両立しながら課題をこなしていくことは、想像していた以上に大変でした。計画しても計画通りには進まないもので、締め切り前には徹夜が当たり前になっていましたが、課題をこなす度に、新たな発見があり精神的にはとても充実していたように思います。入学して最初の課題「デザイン基礎1(情報デザイン)」での辞書制作では、自分なりのデザインの意味を考えるきっかけとなり、その答えは以降の課題へ取り組む際の指針ともなりました。
卒業してからもうすぐ1年が経ちますが、感じることは、自身のものの考え方が入学前に比べ確実に変わったということです。在学中には気がつきませんでしたが、仕事やプライベート問わず、何か問題に直面したとき、持ち合わせている情報を整理し、情報が足りなければ探し集め、どう問題を解決すべきかの手段を考えている自分がいます。理解できない物事に遭遇したとき、様々な切り口からその物事を見ようとしている自分がいます。今まで感覚に頼りがちだった私からは想像もつかないほど頭を動かすクセがついていることに気がつきました。勿論、大学は私に「考えること」という種を植えてくれたに過ぎません。これから大きく育てていくのも、枯らしてしまうのも自分次第です。
現在は仕事をしながら、新たなデジタル表現の手法を身に付けたいと思い、昨年秋から専門学校に通っています。デザインとは思考と手法がうまく融合した時に何倍にも力を増し、人々を動かすものであると思います。
大切なのはいかに考えるか。染織をやっていた頃の私にこの「考える」という習慣が身についていたなら、きっともっと前向きに染織も学べていたんだろうと思い返します。
卒業制作作品 「スマホ・タブレットアプリ『USO』」
現代の曖昧な情報化社会の危険さをテーマに、情報の真偽を判別する架空のアプリ企画
「卒業制作展風景」