【卒業生からのメッセージ】植松達馬さん(2011年度卒業生)
「考えることの大切さ」
早いもので、大学を卒業してから1年が経とうとしています。2年間という短い学生生活でしたが、その後の自分を変えるきっかけとなった、非常に大きな経験だったと思います。
私は、専門学校を卒業後、看板会社や広告代理店を経て、2002年に独立しました。私が働きはじめた頃は、Macの登場によってデザインの制作環境が激変している時代でした。IllustratorとPhotoshopが使えれば、デザイナーとして採用する会社もありましたし、デザインを学ぶというよりも、ソフトを覚えることに必死だったのを思い出します。
その頃から、デザインに対する勘違いがはじまっていたと思います。デジタルに頼って制作する習慣が、自分の感覚を鈍化させていました。年齢を重ねるにつれ「デザインとは何か? 」と考えるようになった時、何もわかっていない自分に気付いてしまったのです。会社を設立して9年目のことでした。このままではダメだ…。そんな想いから、一度立ち止まってデザインについて考えてみようと思いました。
そして2010年、京都造形芸術大学に入学。最初に提出した課題が、いきなりのD評価。自分の現状を叩きつけられたような感じでした。プライドも何もかも一気に吹き飛び、そこから本当の意味での学生生活がスタートしました。
大学では「考えること」の大切さを教えていただいたと思います。それは、今まで自分がサボっていたことなのかもしれません。テキスト課題でも、スクーリングでも、考えることに最も時間を費やしました。卒業制作では、1年中考える時間だったような気がします。自分の中の先入観に何度も邪魔をされましたが、デザインをする上で「考えること」がとても重要であると感じました。
大学の課題も、実際の仕事もそうですが、「より良く」するために、必死に考え、心を込めて作ったものは、伝わり方も質も違うものになります。見えない部分をどのようにカタチにするか。そこに「デザインとは何か? 」のヒントがあるように思います。
そして、先生方の助けやアドバイス、友人たちの励ましがあったからこそ、何とか卒業することができました。このような人と人との繋がりにも「デザインとは何か? 」のヒントが隠れているように感じています。卒業してから、何となくわかってきたことです。
卒業制作作品「禁止しない禁止サインの提案」(2012年SDA賞 入選)
宝塚牛乳 リニューアルデザイン