【卒業生からのメッセージ】西久保晴美さん(2010年度卒業生)

「先生、実はね漫画家になりたくて。でも、親から反対されてるんです。」
「デザイナーになりたいけど、」

高校で生徒から聴く夢の話の「だけど」の後は、周りの大人たちからの反対の言葉が多く、私の高校生の頃と同じだなぁと思って、深く頷いて夢の話を聴いています。

私も現在進行形で、夢のプールの中でバタバタと犬かきをしている状態です。もがいては、息を吸って、またもがいては…の繰り返し。先生やギャラリー、編集者の方に作品を見てもらったり、ワークショップに参加してみたり、違う画材で描いたり、何枚も描き直してみたり、そうしているうちにだんだんと私なりの泳ぎ方ができそうになってきました。

学生の頃は、“ 自分なり” を早く見つけたくて焦って、どうすればいいのだろう? と先生に相談したことがあります。「今は決めなくていい。そうやって、一生もがき続けるものだよ。変化し、成長し続けないと。」それからは焦る気持ちを落ち着けて、ゆっくりと自分と向き合って描いていけるようになりました。

まず卒業制作にとりかかる前に、何のためにする課題なのだろうか? というところから考えました。ただ作品を制作するだけでなく、自分の目標はどこにあるのか考え直しました。卒業後も制作し続けられるように、コンセプトや計画を立てて制作スタイルの工程を身につけられること、客観的に作品を見て判断力をつけること、その力をつけるために私は卒業制作をするんだと再確認しました。そして絵本を制作するために、粘土でモデルを作ってみたり、引き出しや海外の古切手などを用意したり、取材の写真を撮ってきたりと、描くまでの準備にも力を入れた姿勢を今の制作でも活かしています。粘土で主人公のモデルを作ってみて、ポーズを考えたり、イメージをふくらませたりして、絵本を制作しています。

教育実習で、授業の前に、何の力をつけるためにする課題なのか、生徒たちに目標を示してあげることで理解が深まると、教えていただきました。通信制の大学は、入学理由も目標も十人十色だと思います。でも、先生方が考えた課題の中で身につけてほしい力は同じです。その力が、今後どこで発揮されて活かされるかは、その人次第です。

「怠けたことはすぐ結果に出るけど、努力したことは結果が出るまで時間がかかるもの。だから、続けることをあきらめちゃだめだよ。」私が何度も壁にぶつかって落ち込んでいるときに、かけてもらった言葉です。

この一年を終えて、どんな力がついたのか、それは自分より周りが気づいてくれているかもしれません。

不安や希望が混じった表情でも、目を輝かせて夢を話してくれる生徒たちを見ていると嬉しく思います。きっと、支えてくれた人たちもそう思って、あなたの話に相槌をうってくれているんでしょうね。

ご卒業おめでとうございます。