【教員コラム】テキスト科目のススメ—河野綾

皆さんご存知の通り、スクーリングは制作に没頭できる環境での受講となります。疑問点には即座に教員からの意見が得られ、合評に向け作業を進める緊張感に満ちた教室の雰囲気もあり、いつも以上の集中力で作品を完成へと進めることができます。

一方でテキスト科目は、ご自宅で孤独に取り組むケースがほとんどではないでしょうか。日々の多忙な生活のなか、最もリラックスできるであろう生活空間で一人取り組む…というのは、自覚はあれども先送りにしてしまうことも納得できます。しかし、作品制作はそもそもが孤独な作業です。このテキスト科目に向き合うことが制作の基本姿勢だと考え、まずはご自身が集中して制作できる環境や状況、時間の使い方を工夫してみてください。早めに提出し教員の添削を参考にしたり、質問票や学習会を活用したり、自分に合った学習方法を把握しておくこともおすすめします。

そのような制作体制を徐々に整えるためにも、情報デザインコースの専門教育科目はステップアップ式になっています。4年間ないしは2年間でアイディアを生み出す力や表現力を修得するには、このステップを基本としバランスよく学び進めることが大切です。

それでは各ステップでのポイントを説明します。まずは1年次テキスト科目について。科目によっては少し難解さを感じる場合もあるかもしれませんが、初学者に向けた導入であり、基礎学習となりますので、課題に対する回答がある程度見える状態で進めることができます。ボリュームのある課題でも少しずつ丁寧に取り組んでいけば完成に近づいていきます。

これが2年次になると、テーマに沿ったアイディアが求められることになります。アイディアってやっかいですね。自分では新奇性があると思ってもD評価となったり、新しさや面白さがわからなくなり正解を探し求めてしまう状態を経験された方も少なくないでしょう。ここで難易の分かれ道となるのは、日頃の観察力と観察したものをきちんと頭の中に蓄えているかということです。ヒントやきっかけは外の世界から与えられても、アイディアへの昇華は自分自身の頭の中でおこないます。ですので、観察対象が自分の価値観や興味とは関係ない事物でも、対象そのものや対象について感じたこと考えたことは頭の中の保管場所へ残しておいてください(スケッチブックやノート、携帯電話の画像やメモに記録しておくのもよいでしょう)。それら蓄積されたデータは一見関連しないものの集合でも、あるキーワードが与えられたとたんに結びつき、新たなアイディアへと生まれ変わります。これが結びついた瞬間に「ひらめいた! 」と感じ、キラリと希望の光が見え、それまでの苦しみが楽しさに変わっていくのです。

このように2年次でおよその観察力やアイディアの出し方(ひらめきのコツ)などを修得したという前提で3・4年次の科目はスタートします。「情報デザイン演習3-1」を例に取りあげると、次のステップとして「課題設定」から取り組みます。2年次科目までは教員が考えた課題に向き合い、ある程度限られた表現方法での制作でした。しかし「情報デザイン演習3- 1」などの自主テーマ研究では課題自体を自分で設定し、それに対する回答として作品を制作することになります。ここで課題となるテーマが見つからなければ、十分な完成にはつながりません。力んで壮大なテーマを設定される場合がありますが、これまで学習したことや観察したもの、日常の中から興味対象を探してみてください。よく知らないものより、実感を伴ったテーマの方が説得力のある作品へとつながるでしょう。こういった作品制作の力が4年次の卒業制作では必要となります。注意点として、3・4年次テキスト科目は2課題設定ですので早期着手を心がけ、教員とのやりとりを多く持つことも想定しておいてください。

また、年次が進むにつれて、これらのアイディアを最良の形にする表現方法の選択、また技術力(描画力、PC操作など)の向上も求められます。これらは作品に取り組む中で得るほかありません。特に技術力においては、自らの考えを外国人に伝えるためにその国の言語を学ぶように、伝えたいテーマを表現できる描写力やPC操作などを地道に訓練していきましょう。

文字数も限られていますので、今回は簡単な概要説明にとどめますが、引き続き『雲母』誌上では科目担当教員よりテキスト科目のコツをお伝えしていきます。さらに今年度はサイバーキャンパスに掲載する参考作品を充実させていきます。但しあくまで参考作品であり、それぞれの評価ポイントは異なりますので、あまり引っ張られすぎないようご注意ください。

3年次スクーリングの履修の前提条件や、卒業制作着手要件にもテキスト科目の履修状況が関わっていますので、シラバスをよく確認し偏りなく計画的に進めるよう心がけましょう。各課題を通して、皆さんの新たな一面や可能性が発見されることを願っています。

河野綾(教員)