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2005年度 卒業制作・卒業研究 作品・論文集

卒業制作展・卒業生に寄せるメッセージ

卒業制作展

■会期
 2006年3月14日(火)~3月19日(日) 10:30~18:30(最終日は17:00まで)
■会場
 京都造形芸術大学 瓜生山キャンパス
 人間館、ギャルリ・オーブ、ギャラリーRAKU、D'sギャラリー
■コース別出展者数
 芸術学コース67名、歴史遺産コース4名、日本画コース49名、
 洋画コース55名、陶芸コース61名、染織コース24名、
 写真コース2名、情報デザインコース25名、
 建築デザインコース44名、ランドスケープデザインコース34名、
 空間演出デザインコース4名
■入場者数
  6,380名

卒業生に寄せるメッセージ

「紅旗征戎吾事に非ず」
京都造形芸術大学 学長 芳賀徹


 毎年書いていることですが、通信教育部の学生の皆さんに、京都で、東京で、また福岡や名古屋で、お目にかかるのは、私にとってとてもうれしいことです。という以上に、皆さんの勉学に打ちこむすがたに、こちらがかえって励まされ、勇気づけられるような気がします。京都の藝術の大学で教員をしていてよかった、とまたあらためて思うのは、皆さんのそのような勉学のすがたに接したときです。
  たとえば、京都の人間館の二階でエレベーターから出ると、すぐ目の前の大教室で日本画の学生さんたちが何十人か、それぞれに作品の仕上げに夢中になっている。何週間ぶりかのスクーリングで、みんなそれぞれに家事や仕事や時間やお金をやりくりして、この京都のキャンパスにやってきた人たちでしょう。
  しばらく教室のドアからのぞきこんでいると、誰ひとり無駄なおしゃべりなどしていない。机の間を歩きまわっている担当の先生とも、ひそひそ声でやりとりしているだけです。あとはひたすらに、ちょっと古い言葉でいえば「しし孜々」として、顔料を溶き、筆をもち変え、ふぅっと息をついたりしながら、画面のなかに没頭している。
  私は皆さんの、このようなときのこのような姿勢が、おそらく作品の最終結果以上に、皆さんの生涯にとってもっとも貴いものなのではないかと感ぜずにはいられません。皆さんの念頭からは、しばらくの間は、それぞれの家庭のことも、世間のことも、日本も世界も消え去って、ただ一本の筆にみずからの心身を託しきっているように思われるのです。
  昨年、2005年は『新古今和歌集』が勅撰されてちょうど800年というので、京都でもいくつかの記念行事が行われましたが、その選者の一人でもあった藤原定家(1162-1241)は、まだ若者であったときの日記『明月記』につぎのような有名な言葉を書き残しました。

世上乱逆追討、耳に満つといえど雖もこれ之を注せず。紅旗征戒吾事に非ず。
 これが書かれた治承四年(1180)の9月といえば、都が平清盛によって福原に移され、源頼朝が伊豆に挙兵したというような、天下の大変動がいよいよ始まったばかりのときでした。そのとき、その渦中の京都にとどまって、19歳の青年詩人定家は、平氏追討だの源氏の蜂起だの、戦乱のニュースは日々に聞こえてきて騒々しい、だがそんなことは一切「吾事に非ず」、とうそぶいていたのです。そしてひたすら源氏物語や古今集など大古典の研究にいそしみ、自分の歌学の錬磨に打ちこんだのでした。
  「紅旗征戎吾事に非ず」と言い切ったところには、若者らしいてら衒いのポーズもあったのかもしれません。それに日記にこのように書きこむほどに、彼には戦乱のなりゆきが実は不安と焦燥を掻きたてていたのかもしれません。しかし、そんな心配を抑えこみ、狂乱の世情は「吾事に非ず」と開き直った、その青年定家の心意気がみごとだし、素敵ではありませんか。
「この一筋につらならん」としたこの自負と、時代への対決のなかから、やがて『新古今』の名歌中の名歌、世界の詩史の最高峯ともいうべき定家の歌の数々、たとえば
春の夜の夢の浮橋とだえして嶺に別るる横雲の空
白妙の袖の別れに露落ちて身にしむ色の秋風ぞ吹く
は生まれたのでした。
  皆さんをそのまますぐに21世紀の藤原定家に見立てようというのではないけれど、定家のこのあっぱれな心意気は、ぜひ皆さんも受けつぎ、わかちもって下さい。時代に迎合せず、時代に対決して、あのスクーリングにおけるように、一途に創作に打ちこんでゆくとき、いつかはじめてその藝術作品は一つの普遍に達し、人々の魂を救う力をも宿すものとなりうるでしょう。
  藤原定家はいまから800年前、この都の、私たちの大学からそう遠くもないところに生きていた人でした。



「2005年度卒業制作展に寄せて」
京都造形芸術大学 通信教育部長 曽和治好


 卒業制作及び卒業論文を完成させたみなさん、素晴らしい成果だと思います。社会人と言う立場で、仕事や様々な状況とのバランスを取りながら通信制の芸術大学で学び、その総括としての卒業制作を創り上げることは、並大抵の努力では成し得なかった快挙です。本当に素晴らしい成果です。
  この成果を、ぜひ、もう一つ上の活動ステージへとつなげて下さい。それは、京都造形芸術大学通信教育部の共通目標の一つである、「芸術による地域の活性化」です。卒業生の皆さんが、本学で積み上げた創作研究成果を、実際に皆さんが生活する環境のなかで、徐々に育てていってください。そうです。卒業を契機として、これからは「学び」を「育てる」ことに展開していただきたいのです。
  あなたのなかに産まれた芸術を育てる。あせる必要はありません。ゆっくりと行きましょう。土壌をつくり、肥料をあたえ、水をまき、見守ります。時には風雨から守ってあげることも必要になるでしょう。そうして時を重ねるうちに、あなたの芸術は、すくすくと育ち、やがて美しい花を咲かせる時を迎えるでしょう。「芸術の花」です。開花を迎えたときには、仲間と喜びを分かち合いましょう。
  このような、自身の芸術を育てる行為を通じて、卒業生が相互に結びつくことにより、ゆっくりと地域の芸術性が高まり、芸術の精神性が地域に広がり、新たな価値観が産まれるのだと思います。そのような意味において、ぜひ、卒業後も京都造形芸術大学を活用してください。一緒に芸術を創造してゆきましょう。